他の相談者が被相続人の預金を使い込んでいた場合

法律コラム
他の相続人が、被相続人の預金を使い込んでいた場合の対処法
 

2024年7月10日

弁護士 上原 光理

 

下記事例は、個人が特定できないよう情報を加工しております。

 

相談の背景

相談者Aは父親の相続で来所されました。

Aは、父親の生前、父親から「預金が4500万円あるから、兄弟3人で1500万円ずつ分けるように」と言われていました。

しかし、その後、父親は施設に入所することとなりました。その際、父親の預金通帳などは長男Bが預かっていました。

Aは、父親の死亡後、遺産分割協議をすることになりましたが、Bから示された父親の預金は300万円程度となっていました。

Aは、父親の生前、父親から上記のように預金が4500万円あると言われていたため、預金が300万円しか残っていないことを不思議に思い、Bに対して通帳を提示するように求めましたが、Bは取り合ってくれませんでした。

そこで、Aは、自ら銀行へ行き、父親の預金の取引履歴を取得しました。そうしたところ、父親が施設に入所して半年後から高額の出金が複数回なされていました。そのため、ABの使い込みを疑うようになりました。

ABに対して、預金の取引履歴を提示して、Bが父親のお金を使い込んでいるのではないかと聞きましたが、Bは父親から出金を頼まれて、出金をして父親に渡していたと言い、自らが使い込んだことを否定しました。

Aは、父親が施設に入所後、会話が成立しないこともあったことから、父親がBに出金を依頼できるような状況にはなかったのではないかと思い、父親が通院していた病院へ連絡をし、父親の医療記録等を提供してほしいと依頼しました。しかし、病院は応じてくれませんでした。

そのような状況の中、A様は当事務所にご相談に来られました。

 

弁護士が対応したこと・結果

 まず、父親が通院していた病院に医療記録を請求し、提供を受けました。

 また、父親は介護認定を受けていたため、役所の介護保険課に介護認定を行うにあたり行った調査に関する資料の請求を行い、提供を受けました。

 上記資料を調査したところ、父親が施設に入所して約半年後には認知機能が低下し、異常行動を行うようになっていました。そして、同時期に行った認知機能の検査に基づき認知症と判断されていることが分かりました。

 そこで、同資料をBに提示し、Bの預金の使い込みを追及したところ、Bは自らの使い込みを認めました。その結果、Bが使い込んだ金額を含めて遺産分割協議を行うことができ、Aは本来取得すべき相続分を取得することができました。

 

弁護士からのコメント

 被相続人が通院・入院していた病院や介護認定を行った役所は、相続人が被相続人に関する医療記録・介護認定記録を請求しても応じてくれない場合が多々あります。

 そのような場合、弁護士が代理人となり、病院・役所に対して医療記録等の資料を請求し、取得することで、客観的に被相続人の認知機能がいつ、どのような状況にあったかを把握することができます。

 そして、そのような客観的な証拠を相手方に突きつけることで、遺産分割の話し合いを早期に、うまく解決することができます。

 このような事案でお困りの方は、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。