テレワーク中のモニタリングはどこまで許される?法的リスクと正しい運用法

新型コロナウイルス感染症の流行を経て、私たちの働き方は大きく変わりました。在宅勤務やサテライトオフィス勤務といった「テレワーク」が定着する一方で、経営者や人事労務担当者の皆様からは、新たな悩みが寄せられています。

「従業員が自宅で本当に仕事をしているのか見えない」
「情報漏洩のリスク管理はどうすればいいのか」

こうした背景から、会社貸与のパソコンに操作ログを記録するツールを導入したり、Webカメラを用いた管理を検討したりする企業が増えています。

しかし、一歩間違えれば「行き過ぎた監視」として、従業員のプライバシー侵害や法的なトラブルに発展するリスクがあります。

弁護士 久保

今回は、テレワークにおける従業員のモニタリングについて、どこまでが許容され、どのような手続きが必要なのか、法律の観点から分かりやすく解説します。

1. 「管理する権利」と「プライバシー」のバランス

まず大前提として、会社には従業員が契約通りに働いているかを把握し、指示を出す権利(労務指揮権)があります。しかし、従業員にもプライバシー権があり、会社だからといって無制限に私生活や個人の領域を覗き見てよいわけではありません。

この点について、過去の裁判例(最高裁昭和43年判決/所持品検査に関する事案)から導き出される、「管理」を正当化するための重要な4つの基準があります。

  1. それを行う合理的な理由(必要性)があるか
  2. 方法が一般的で妥当(相当性)なものか
  3. 制度として公平(画一的)に行われているか
  4. 就業規則などの根拠があるか

テレワークのモニタリングにおいても、この「業務上の必要性」と「やりすぎではないかという相当性」のバランスが極めて重要になります。

2. 「PCログの確認」と「Webカメラ常時接続」の境界線

具体的に、どのようなモニタリングであれば許容されるのでしょうか。代表的な2つのケースを見てみましょう。

ケースA:貸与パソコンの稼働履歴やWeb閲覧履歴の確認

判定:原則として許容される可能性が高い

「就業時間中」に「会社の所有物であるパソコン」の利用状況を確認することは、業務の進捗管理やセキュリティ確保(業務に関係ないサイトを見ていないか等)のために必要性が高いと認められます。あくまで業務用の端末・時間帯に限った確認であれば、プライバシー侵害の程度は低く、合理的な範囲内と考えられます。

ケースB:Webカメラで部屋全体を24時間監視

判定:違法となるリスクが高い

たとえ在宅勤務中であっても、自宅は私生活の場です。カメラを通じて家族が映り込んだり、生活の様子が常時監視されたりすることは、プライバシー侵害の度合いが非常に大きくなります。業務管理という目的があっても、手段として「行き過ぎ」であり、法的にも問題視される可能性が高いでしょう。

3. トラブルを防ぐための4つの実務ステップ

では、会社として適法にモニタリングを行うためには、どのような手順を踏むべきでしょうか。ここで重要になるのが「個人情報保護法」の視点です。

従業員のPC操作履歴や閲覧履歴は、特定の個人を識別できる情報であるため、「個人情報」に該当します。会社がこれらを秘密裏に収集することは避けなければなりません。導入にあたっては、以下の4つのステップを確認してください。

  1. 目的の特定と明示 「何のためにモニタリングするのか」を明確にします(例:人事評価のため、情報セキュリティ確保のため等)。
  2. ルールの策定(就業規則・在宅勤務規程への規定) 「会社はモニタリングを行うことがある」という根拠規定を就業規則などに設けます。
  3. 従業員への周知 こっそり行うのではなく、「このルールに基づいてログを確認しますよ」と従業員に通知・公表し、透明性を確保します。
  4. 運用体制の整備 誰がモニタリングの責任者なのか、データはどう管理するのかを定めます。

また、ガイドラインでは、こうした個人情報の取り扱いに関する重要事項を定める際、あらかじめ労働組合等と協議を行うことが望ましいとされています。

4. 信頼関係を築くためのモニタリングを

テレワークにおけるモニタリングは、単に「サボっていないか見張る」ためだけのものではありません。長時間労働の防止や、セキュリティ事故の予兆検知など、従業員と会社を守るためにも有効な手段です。

重要なのは、「隠れて監視する」のではなく、「ルールを明確にして運用する」ことです。

適正な手続きを経ずにモニタリングを強行すれば、従業員のモチベーション低下や不信感を招くだけでなく、法的な紛争リスクも抱え込むことになります。

「自社のテレワーク規定にモニタリングの条項が入っていない」 「これからツールを導入したいが、従業員への説明の仕方がわからない」

そのようなご不安をお持ちの経営者様、ご担当者様は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。貴社の実情に合わせた、リスクの少ない制度設計をサポートいたします。

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