いつもお世話になっております。スフィア法律事務所立川オフィスの代表弁護士のみくりやです。今回は、経営者ご自身やご家族の相続に直結するテーマとして、いま急速に増えている「デジタル遺産」の落とし穴と、その備えとなる「デジタル終活」についてお知らせいたします。
財産が「スマホの中」で完結する時代になりました
ネット銀行やネット証券、暗号資産(ビットコインなど)、PayPayやSuicaといった電子マネー、各種ポイント――。通帳やカードといった「紙・現物」を伴わず、スマホやパソコンの中だけで管理される財産が急速に増えています。便利な一方で、相続の場面では大きな問題を生みます。
パスワードが分からないと、家族は「資産の存在すら」気づけません
デジタル資産は、故人のスマホやパソコンのロックを解除できなければ、その存在を把握することさえ困難です。パスワードのメモがなく、顔認証・指紋認証などの生体認証だけに頼っていた場合、ご逝去後はロックの解除が事実上できなくなってしまいます。
【小話】生体認証は「ご遺体では開かない」
デジタル終活に力を入れて取り組んでおられる、たまらん坂税理士法人の坂本新先生から伺ったお話です。スマホの顔認証や指紋認証は、亡くなってご遺体が冷たくなってしまうと反応しなくなるのだそうです。しかも、故人のお写真をかざして顔認証を突破することもできないとのこと。ロックを解除する専門の開錠業者もいますが、その成功報酬が「総財産の1割」という非常に高額なケースも珍しくないそうです。「生体認証だから安心」とはいかない、というわけです。
実際に、高額の暗号資産を保有していたにもかかわらず、ID・パスワードが分からず、ご家族が一切引き出せなかったという事例も報告されています。
「使えないのに相続税だけかかる」ことも
さらに注意が必要なのが税金です。パスワードが分からず引き出せない資産であっても、亡くなった時点で存在していたと認められれば、税務上は「存在する財産」として相続税の課税対象になり得ます。「使えないから」と申告から外しても、税務当局は預金の送金履歴などから保有を把握する仕組みを強化しており、後日の税務調査で問題となるおそれがあります。「引き出せないのに税金だけ課される」という事態は、避けたいところです。
今できる備え ―「デジタル終活」チェックリスト
・ログイン情報を紙に残す…スマホ・パソコンのパスワード、主要なネット口座・暗号資産・電子マネーのID等を書き出し、保管場所を家族が分かるようにしておく
・財産の所在を一覧にする…どの銀行・証券・交換業者・サービスを使っているかをリスト化しておく
・サブスクを把握しておく…放置すると死後も課金が続くため、契約中のサービスも記録しておく
・遺言やエンディングノートに反映する…誰に何を引き継ぐか、生前に整理しておく
まとめ
デジタル資産は、備えがないとご家族が「存在に気づけない・引き出せない・税金だけかかる」という三重の困難に直面しかねません。まずはご自身のスマホの中身を棚卸しし、ログイン情報と財産の所在を家族に分かる形で残しておくことが第一歩です。デジタル資産を含む相続・事業承継の整理や、遺言書の作成でお困りの際は、ご相談を承りますので、お気軽にお知らせください。

