従業員の「プライベートでの不祥事」で懲戒処分はできる? ― 私生活上の非行と懲戒解雇

皆様、いつもお世話になっております。スフィア法律事務所立川オフィスの代表弁護士のみくりやです。今回は、経営者の方からよくご相談をいただく「従業員が私生活(プライベート)で問題を起こしたとき、会社は懲戒処分にできるのか」というテーマについて、最近の裁判例を交えてお知らせいたします。

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出発点は「私生活上の行為は原則として懲戒の対象外」

会社の懲戒権は、あくまで「会社の秩序を守るため」に認められるものです。そのため、就業時間外・会社の外で起きた従業員の私生活上の行為は、原則として懲戒処分の対象にはなりません。プライベートでの出来事まで会社が処分できるわけではない、というのが基本的な考え方です。

ただし「会社の信用」や「事業との関係」があれば懲戒できる

もっとも、私生活上の非行であっても、①会社の社会的信用を著しく傷つける場合や、②その従業員の仕事・事業の性質と密接に関係する場合には、懲戒処分(時に懲戒解雇)が認められます。特に、従業員の非行がそのまま事業の信頼を揺るがすような業種では、私生活上の行為でも重い処分が有効とされやすい傾向にあります。

最近の裁判例:休職中のバス運転士の飲酒運転事故

このことが正面から問題になった裁判例があります(東京地裁・令和7年判決)。路線バス会社の運転士が、休職中かつ勤務時間外に、多量に飲酒したうえで運転して人身事故を起こし、罰金刑を受けたという事案です。しかも事故後に車内で飲酒して発覚を免れようとする隠蔽工作までしていました。

会社はこれを理由に懲戒解雇。運転士は「業務時間外・休職中の私的な出来事だ」「酒酔いには至らず罰金刑にとどまる」などと争いましたが、裁判所は、バス事業者にとって運転士の飲酒運転・人身事故は会社の信用を著しく損なうものであり、休職中でも変わらないとして、懲戒解雇を有効と判断しました。あわせて、退職金の不支給も認められています。

会社が気をつけるべきポイント

・就業規則に懲戒事由を明記しておく…「刑罰法規に違反し有罪となったとき」「社会秩序に違反する行為」など、根拠となる規定を整備しておく

・事業への影響を具体的に説明できるようにする…なぜその非行が会社の信用や事業に関わるのかを示せることが重要

・処分の重さ(相当性)に注意する…過去の処分歴や他の従業員との均衡を欠くと、処分が無効になることもある

・弁明の機会など手続を踏む…本人に言い分を聞く場を設けることが、後の紛争防止につながる

まとめ

従業員の私生活上の非行は、原則として懲戒の対象外ですが、会社の信用や事業の性質に関わる場合には、懲戒解雇まで有効とされることがあります。もっとも、有効になるかどうかは、事業との関連性・非行の重さ・処分の相当性・手続を総合して慎重に判断されます。「プライベートの問題だから」と安易に処分すると、かえって解雇無効となるリスクもあります。従業員の不祥事への対応でお迷いの際は、処分を決める前に、お気軽にご相談ください。

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