給与の天引き、大丈夫?知らないと怖い「賃金支払いの原則」

 毎月の給与は、従業員の生活を支える重要な経済的基盤です。そのため、労働基準法は給与の支払方法について厳格なルールを定めています。今回は、労務管理の根幹である「賃金支払いの4原則」と、特に問題となりやすい「給与からの天引き(相殺)」について、要点を絞って解説します。

目次

1【基本のキ】必ず守るべき「賃金支払いの4原則」

 労働基準法第24条は、賃金支払いについて以下の4つの基本ルールを定めています 。

1.通貨払いの原則
給与は日本円の現金で支払うのが原則です。自社製品や商品券での支払いはできません。

2.直接払いの原則
給与は本人に直接支払わなければなりません。

3.全額払いの原則
会社が一方的な判断で給与から天引き(相殺)することはできません。

4.毎月1回以上払いの原則
給与は、毎月最低1回は支払う必要があります。

2【最重要】給与からの天引き(相殺)は原則禁止!

 以上の「賃金支払いの4原則」の中でも特に注意が必要なのが「全額払いの原則」です。会社が従業員に対して損害賠償請求権や貸付金を持っていても、一方的な意思表示によって給与と相殺することは労基法24条1項違反となります。これは、賃金が労働者の生活の根幹をなす財源であり、会社の都合で一方的に差し押さえられることから保護するための重要なルールです。

3【要注意】「本人の同意があれば相殺OK」の大きな落とし穴

 例外的に、労働者が相殺に同意した場合は有効とされることがあります。最高裁判所は、その同意が「労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在すること」が必要だとしています。しかし、この「同意」の有効性は極めて厳格に判断されます。

まとめ

 今回は、賃金支払いの原則という、労務管理の根幹に関わるテーマについて、基本的なポイントを解説しました。個別の事案で「これってどうなの?」と少しでも迷われた際は、ぜひお気軽に弊所へご相談ください。より実践的で、貴社の状況に即した具体的なアドバイスをさせていただきます。

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