いつもお世話になっております。スフィア法律事務所立川オフィスの代表弁護士のみくりやです。今回は、会社経営における重要なリスク管理として、「社長に万一のことがあった場合に会社が動かなくなるリスク」と、その備えとなる「定款の確認」についてお知らせいたします。
社長に万一のことがあると会社が止まることがあります
会社経営者の方にとって、ご自身の相続や事業承継は後回しになりがちなテーマです。しかし、社長に万一のことがあったとき、会社が法的に身動きの取れない状態に陥ってしまう例は決して珍しくありません。その分かれ目となるのが、普段あまり意識することのない「定款」の内容です。今回は、皆様にぜひ一度ご確認いただきたいポイントをお知らせします。
まずは自社の定款を確認してください
多くの会社では、設立時に作成した定款をそのまま使い続け、その内容を改めて確認する機会がほとんどありません。定款は会社のルールブックであり、社長に万一のことがあったときの手続きの進めやすさを大きく左右します。まずは一度、自社の定款を取り出し、現在の機関設計がどうなっているかをご確認ください。これがすべての出発点になります。
「取締役会設置会社」「監査役設置会社」の落とし穴
定款を確認する際にまずチェックいただきたいのが、「取締役会設置会社」「監査役設置会社」になっていないか、という点です。実態としてはほぼ社長お一人で動かしている小規模な会社でも、設立時に入手したひな形の定款をそのまま使ったために、本来は必要のない取締役会や監査役を置く設計になっているケースが少なくありません。取締役会設置会社では取締役が3名以上必要となるなど、経営の実態と定款上の体制が食い違っていると、思わぬ形で会社が立ち行かなくなるおそれがあります。
取締役が3名・株式が社長に集中している場合のリスク
取締役会設置会社では取締役が最低3名必要です。例えば取締役3名のうち1名が社長で、その社長が亡くなると、取締役は2名となり法定の人数を欠いてしまいます。すると取締役会を適法に開けず、新たな代表取締役の選任など重要な意思決定ができなくなります。さらに、社長が会社の株式の大半を持っている場合、その株式は相続の対象となり、遺産分割が終わるまで相続人全員の準共有状態となります。相続人の間で話がまとまらなければ、役員選任に必要な株主総会の決議も難しくなります。株主総会と取締役会が適切に機能してはじめて、法的に有効な手続きを進めることができるのです。
実際にあった「黒字倒産」の事例
当事務所が実際に関わった案件にも、こうしたリスクが現実になった例があります。ほぼワンマン経営の会社でしたが、ひな形の定款を使っていたために取締役会・監査役を置く設計で、取締役は3名ぎりぎりでした。そのまま社長が急逝し、会社名義口座からの引き出しやリース・オフィスの契約更新といった手続きが必要になったものの、他の取締役2名は普段経営に関わっておらず代表就任をためらい、ほかに候補もいないため取締役会が機能しませんでした。結局、事業は黒字だったにもかかわらず会社を動かせず倒産に至った、いわゆる「黒字倒産」のケースです。
皆様にお願いしたい備え
こうした事態は、事前の備えで防げる可能性が十分にあります。具体的には、経営の実態に合わない機関設計になっていないか定款を見直すこと、万一に備えて後継者や予備の役員候補を確保しておくこと、そして誰に株式を引き継ぐのかを生前に整理しておくこと、の3点が大切です。会社ごとに最適な進め方は異なりますので、自社の定款や株式の状況に少しでも不安がある場合は、お早めに当事務所までお知らせください。現状の点検や必要な見直しのご相談を承ります。
まとめ
社長に万一のことがあったとき、会社がスムーズに動き続けられるかどうかは、普段意識しない定款の内容に大きく左右されます。取締役会設置会社・監査役設置会社になっていないか、取締役の人数に余裕があるか、株式が社長に集中していないか――この機会にぜひ一度ご確認ください。事業が黒字であっても会社を動かせなくなるリスクは現実に存在します。元気なうちの点検が、会社とご家族を守る最善の備えとなります。

